研究内容

研究内容紹介

高純度NK細胞(GiNK)

1.当社独自の高純度NK細胞培養技術
NK(natural killer)細胞はがん細胞を攻撃する免疫細胞として知られています。1970年代、体外で培養したNK細胞(LAK: lymphokine-activated killer)をがん治療に用いる研究が行われていましたが、その効果は限定的でした。その理由として、LAKに含まれるNK細胞の純度が低く、免疫抑制効果を持つT細胞(regulatory T cell)を含む可能性があることが挙げられます。当社ではこの問題を克服した、高純度NK細胞の大量培養技術を開発しました。当社技術で培養したNK細胞を「正真正銘の培養NK細胞」という意味を込めて「Genuine-induced Natural killer cell(GiNK)」と命名しました。 下の写真に示した細胞がGiNKです。LAKとGiNKにおけるNK細胞の純度の代表的なデータを下の図に示します。GiNKはCD3-CD56+NK細胞の純度が極めて高いことが確認できます。また、さらなる培養技術の改良により、血液の状態によるNK細胞の純度や培養効率のばらつきを軽減させることに成功しました。今後、これまで以上に高い培養効率と安全性を兼ね備えた当社独自技術で培養されるGiNKは広く臨床応用されることが期待されます。
本研究内容は国際科学雑誌PLOS ONE、日本再生医療学会機関誌Regenerative Therapyに掲載されました。

2.GiNKによるがん細胞の破壊
大型のがん細胞(脳腫瘍由来細胞)をGiNKが攻撃している様子が確認できます。動画撮影時間は約1時間程度であり、GiNKはがん細胞に対して素早く反応し、がん細胞を破壊することが確認できます。

3. GiNKの担がんマウスに対する抗がん効果
ヒトのがん細胞が生着しやすい高度免疫不全マウス(NOGマウス)にがん細胞(脳腫瘍由来細胞)を移植し、GiNKの抗腫瘍効果を評価しました。その結果、GiNKはがん細胞を移植したマウスの生存期間を延長させることが明らかになりました。本研究内容は国際科学雑誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました。

GiNKの担がんマウスに対する抗がん効果
担がんマウスへのGiNKの投与
GiNKの担がんマウスに対する抗がん効果
GiNKによる担がんマウスの生存期間延長効果

4. GiNKのがんスフェロイドに対する抗がん効果
からだの中にできるがん組織に近い環境を再現したがんスフェロイド(脳腫瘍細胞由来)に対するGiNKの抗がん効果を評価しました。その結果、GiNKはスフェロイド内のがん細胞に対してアポトーシス(細胞死の形態の一つ)を誘導することが確認されました。下左図の緑色は蛍光色素CFSEで標識したNK細胞を、赤色は死細胞を示します。GiNKと共存させることでがんスフェロイドが細胞死を起こしていることが確認できます。下右図はフローサイトメーターを用いてがん細胞のアポトーシス誘導を評価した結果を示です。GiNKと共存させることでスフェロイド内のがん細胞がアポトーシスを起こしていることが確認できます。本研究内容は国際医学雑誌Cancersに掲載されました。

GiNKのがんスフェロイドに対する抗がん効果
GiNKとがんスフェロイドの共培養と細胞死誘導
GiNKのがんスフェロイドに対する抗がん効果
GiNKによるがんスフェロイドのアポトーシス誘導

γδNKT細胞

1. γδNKT細胞の特徴
下の写真に示した細胞が当社技術で培養したγδNKT細胞です。γδNKT細胞に発現している細胞表面の受容体(レセプター)をフローサイトメーターで分析して得られた結果を下の図に示します。 γδ型のT細胞レセプター(TcR)を発現する細胞はCD2、CD3と呼ばれるT細胞に関連したレセプターの発現に加えて、CD56、CD94、CD161をはじめとしたNK細胞に関連したレセプターも発現し、T細胞とNK細胞の特徴を併せ持つ細胞であることが確認できます。 本研究内容は京都府立医科大学雑誌に掲載されました。

2.γδNKT細胞によるがん細胞の破壊
長い突起を出しているがん細胞(脳腫瘍由来細胞)をγδNKT細胞が攻撃し、破壊する瞬間が確認できます。γδNKT細胞やNK細胞などの細胞傷害(キラー)活性を持つ免疫細胞はがん細胞を攻撃し、アポトーシスと呼ばれる細胞死を誘導することが知られています。